羅臼岳・岩尾別地区でのヒグマ餌付け疑惑は、2025年8月14日に発生した人身被害の原因になったと言われています。
事故を起こしたのは地元では有名なクマで、誰か特定の人が餌付けしたわけではなく、日頃から観光客によってエサを与えられていたそうです。
一見無害に思えるヒグマへの餌付けですが、実は人とヒグマの双方に悲劇を招くとても危険な行為だったのです。
【判明】事故前にヒグマへの餌付け疑われる事案 男性襲った個体が出没していた地区で…羅臼岳(Yahoo!ニュース)
羅臼岳でヒグマに餌付けしたのは誰?

2025年8月14日に羅臼岳でクマによる人身被害が発生しました。
その約2週間前の7月29日、車内からスナック菓子を与える観光客が目撃されており、事故との関連性を疑われています。
実はこのヒグマは岩尾別では有名は母グマで、「岩尾別の母さん」と呼ばれて親しまれていたそうです。
以前から地元の羅臼町役場が「ヒグマにスナック菓子をあげる観光客が」いると指摘しており、ヒグマへの餌付け行為が日常的におこなわれていた可能性が高いのです。
観光客に親しまれていた一見おとなしい「岩尾別の母さん」もやはり野生のクマ。
人間を食べ物の供給源として認識するようになり、最終的に人を襲う危険な個体へと変貌してしまったのです。
知能の高いヒグマに餌付けすることの危険性
ヒグマは知能の高い動物です。
一度でも人間の食べ物を口にしてしまうとその味を覚え、観光客の車に近づくようになったり、人の生活圏に侵入してきたりと、行動が変化するそうです。
今回のように餌付けされたヒグマは人間に対する恐怖心を失い、”利益のあるもの”として積極的に人間に接近するようになります。
人から与えられた食物の味を知ってしまうと「人間のところに行けばおいしいものが手に入る」と考えるようになり、やがて人間を攻撃して食べ物を無理やり手に入れようとするのです。
危険な行動をとったヒグマは人間の安全のために駆除されることになり、無責任な餌付け行為が結果的に野生動物の命をも奪うことになります。
ヒグマだけじゃない!野生動物への餌付けはお互いに悪影響
ヒグマ以外の野生動物への餌付けも同様に深刻な問題を引き起こします。
野生動物への餌付けは、人間に依存する個体を生み出してしまいます。
例えばサルやシカなどの草食動物でも、人間の食べ物に慣れてしまうと農作物被害や市街地への侵入といった問題を引き起こすようになります。
さらに、添加物たっぷりの食べ物は野生動物の健康状態を悪化させ、病気や栄養失調の原因にもなりかねません。
各地で報告されているサルの群れによる民家侵入事件やシカによる交通事故の増加なども、もともとは人間による餌付けが原因である場合が多いのです。
また、野生動物が人間の食べ物に慣れることで、本来の生態系における食物連鎖が崩れ、他の動植物にも影響が及んでいきます。
自然との適切な距離を保つことが重要だということを、今回の事件が教えてくれたように思います。