2000万匹を超えることもある巨大な群れで周囲の獲物に襲いかかる「サスライアリ」。
その旺盛な食欲は周囲にある食料を食べ尽くすため、巣を作って定住することができず常に放浪しているのです。
巣を持たないサスライアリの女王はいったいどこにいるのでしょうか?
貪欲で凶暴なサスライアリとは?
サスライアリは、アフリカからアジアの熱帯地方にかけて分布しています。
通常のアリと異なり、サスライアリは決まった巣を作りません。
食料を求めて放浪するところから「サスライアリ」という名前がつけられました。
サスライアリは昆虫類から小型の哺乳類まで、出会った獲物を集団で襲って食べるという獰猛な性質を持っています。
群れは土の中などに仮の巣「ビバーク(野営地)」を作ることがあります。
数十万匹の働きアリたちが脚と体をつないで作ったこのビバークでは、女王アリや幼虫が数日から最大3か月生活します。
食べ物がなくなると再び移動を開始し、アリたちは生涯この放浪生活を続けます。
ちなみに女王アリがいなくなった場合、群れは他のサスライアリの群れに合流するようです。
サスライアリの攻撃力
The biters and the bite 😄
— ggl (@3ggl8) September 27, 2023
The driver ants, Dorylus nigricans ssp pic.twitter.com/h4rhs4KukA
兵隊アリに噛まれると激痛が走り、取り除くと2つの刺し傷が残ります。
兵隊アリの顎は非常に強く、兵隊アリを2つに引き裂いても離さないため、取り除くのは困難なのだとか。
サスライアリは人間を襲うの?
群れの移動は1時間に20m程度と言われていますので、健康な人間が襲われることはあまり無いようです。
ただし、寝ている人が被害に遭ったり、村をサスライアリの群れが通過する際に家畜やペットが咬まれる被害に遭った例はあります。
見た目の通り、危険な生物であることは間違いありませんね。
一方で、この凶暴なアリは現地の人々にとって”作物の害虫や害獣を駆除してくれる有益なアリ”という一面も持っているようです。
サスライアリの群れの構成と大きさ
🌍 Perill o benefici?
— Zoo del Pirineu (@zoopirineu) April 24, 2025
Tot i la seva reputació temible, aquestes formigues migradores ajuden a controlar plagues i a netejar l’ecosistema.
Són una peça fonamental en moltes cadenes tròfiques.#EquilibriNatural #Formigues pic.twitter.com/BX5PDuLwgX
サスライアリの群れは、女王アリを頂点とした階級社会を形成しています。
サスライアリの女王は数十万匹から数百万匹のアリを一匹で束ねていて、群れは最大で2200万匹になることもあるようです。
群れは女王アリ・働きアリ・兵隊アリで構成されており、膨大な数の働きアリたちがまさに軍隊のように統制された行動を取ることがこのアリの最大の特徴。
サスライアリの女王は現生のアリとしては最大と言われていて、40~63mmの大きさになるそうです。
働きアリたちは視力を持たないか、極度に退化しており、フェロモンと振動を頼りに行動しています。
オスのサスライアリはまるでソーセージ
他のアリと同じように、サスライアリの群れもメスだけで構成されています。
時折生まれるオスは孵化後すぐに群れを離れますが、成熟するとフェロモンに引き寄せられて群れに近づいていきます。
群れにたどり着いた雄のアリは、メスのアリたちに羽根をもぎとられて女王アリの元へ運ばれていき、子孫を残した後に生涯を終えることになります。
サスライアリの女王アリは「一妻多夫制」で複数のオスを必要とします。
オスは腹がソーセージのように膨らんでいることから「ソーセージバエ」と呼ばれています。
The males of Dorylus army ants are extremely large and beefy, which has earned them the name “sausage flies”. This Dorylus male of the subgenus Typhlopone appeared at a light at Mpala Research Centre in Kenya one evening. Thanks to Caspar Schöning for help with the ID. pic.twitter.com/0klxirbim8
— Daniel Kronauer (@DanielKronauer) April 20, 2020
サスライアリの女王はどこにいるの?
With a solid two inches in body length, Dorylus queens are the largest ants on the planet. Their massive size correlates with their reproductive output. Over her lifetime, a Dorylus queen lays many million eggs. pic.twitter.com/za9M3bpLau
— Daniel Kronauer (@DanielKronauer) March 18, 2024
サスライアリの女王アリは、大群の中で最も安全な群れの中心付近にいます。
女王アリは群れの中央部で子どものアリを産み続けることに生涯をかけていて、群れの中では圧倒的に大きいアリです。
働きアリたちは女王アリの周りを幾重にも取り囲み、外敵から守りながら移動します。
女王アリは移動の際も働きアリたちに完全に保護され、決して群れの外側に出ることはありません。
サスライアリの女王は1日数千匹の子どもを産みます。
そして、寿命はなんと30年にもなると言われています。
女王アリは幻のアリ?
2000万匹に及ぶアリの中に一匹だけとなると、東京都でたった一人を探し出すのと一緒なんです。
サスライアリは土の中にも入り込むので、常に見える場所にいるとも限りません。
移動している一匹のアリを探すのは至難の業ですよね。
でもビバーク(野営地)が作られているときだけ、そこに女王アリがいることが確定できるのです。
サスライアリとグンタイアリとの違い
群れで獲物を襲うアリというとグンタイアリが有名ですが、サスライアリとの違いはなんでしょうか。
サスライアリとグンタイアリは、どちらも軍隊のような行動をするアリとして知られていますが、実は分類上の違いがあります。
グンタイアリと呼ばれるものには、厳密には3つの亜科に分かれています。この3つの亜科は、それぞれグンタイアリ亜科、サスライアリ亜科、ヒメサスライアリ亜科になります。
サイズ比較と危険度
種類 | サスライアリ | グンタイアリ | ヒメサスライアリ |
---|---|---|---|
女王アリ | 約40-60mm | 約15-20mm | 約8-12mm |
兵隊アリ | 約10-15mm | 約8-12mm | 約4-6mm |
働きアリ | 約3-8mm | 約2-6mm | 約2-4mm |
危険度 | 大 | 中 | 小 |
生息地域も明確に分かれており、サスライアリはアフリカ大陸、グンタイアリは南アメリカ大陸、ヒメサスライアリはアジア地域に分布しています。
日本では、沖縄県の西表島にヒメサスライアリの仲間が生息。
西表島が軍隊アリの日本で唯一の生息地です。ただし、サスライアリが1.5㎝ほどになるのに対し、ヒメサスライアリは3mmほどです。
地面を覆うほどの大群で時には人間や家畜まで攻撃対象にしてしまうサスライアリと、主に昆虫類などを食料とするグンタイアリやヒメサスライアリ。
サスライアリの危険度は他の2種に比べて高いということになります。