夕暮れ時、酔っぱらったかのような足取りでゆらゆらと歩く数頭のゾウが目撃されました。
ケガをしているわけでも映画のワンシーンでもなく、実際にアフリカの大地で起きている「自然界の酒盛り」の光景なのだそうです。
その原因となるのが「マルーラ」という果物。
なぜこの果物がゾウやキリンなどの野生動物たちを酔わせ、なぜ日本では輸入禁止となったのでしょうか?
アフリカの大地が育む「天然のお酒」マルーラとは

マルーラ(学名:Sclerocarya birrea)は、ウルシ科の植物。
アフリカ南部のミオンボ林から西アフリカのスーダン・サヘル地帯、さらにマダガスカルまで広く分布している、ビタミンCが豊富に含まれた果物です。
自然の発酵メカニズム
その最大の特徴は、樹木から落下した果実が自然発酵し、アルコールを生成する点にあります。
太陽の熱と微生物の働きによって、糖分がエタノールに変化。
この現象は「自然発酵」と呼ばれ、アルコール度数は約5%程度に達します。
ゾウが酔ったらどうなるの?

マルーラの果実や葉を食べるのは、キリン・サイ・ゾウ・ダチョウなどが知られています。
なかでもゾウは特にこの木を好み、果実だけで無く樹皮までバリバリ食べてしまうため木に多大なダメージを与えてしまいます。
発酵したマルーラの果実を摂取した動物たちは、明らかに通常とは異なる行動を見せるようになります。
ゾウは、その巨体にも関わらず数十個のマルーラ果実で酔いが回るとされていますが、これは人間が缶ビール1本で酔う程度という計算になるのです。
マルーラを食べたゾウの観察記録
- ふらつきながら歩く
- 岩や木に体をぶつける
- 群れから離れて単独行動を取る
- 水辺で長時間ぼんやりと立っている
酔ったときの行動はなんだか人と一緒ですね 笑
とはいえ、これらの行動が本当にアルコールによるものなのか、それとも果実の糖分による血糖値の急激な変化によるものなのか明らかになっていないようです。
マルーラで作ったお酒「アマルーラ」の誕生

マルーラの商業的価値に注目したのは、南アフリカのDistell社でした。
同社は1989年、マルーラ果実を原料とするクリームリキュール「アマルーラ」を開発。
アマルーラは現在、世界100カ国以上で販売されています。
リキュール「アマルーラ」の製造
- 手摘みしたマルーラ果実の果肉を発酵させる
- 蒸留してアルコール度数を高める
- クリームと砂糖を加えて滑らかな口当たりに仕上げる
アマルーラの製造には、年間約500万個のマルーラ果実が使用されています。
これは南アフリカの農村部で約2,000世帯の収入源となっており、地域経済に大きく貢献しているのです。
味わいの特徴
アマルーラは、トロピカルフルーツの甘さとクリーミーな口当たりが特徴的です。
アルコール度数は17%で、ストレートでも、ロックでも、カクテルベースとしても楽しめます。
特に女性に人気が高く、バニラアイスクリームにかけるデザート酒としても親しまれています。
なぜ危険?マルーラの果実が輸入禁止の理由
日本の植物防疫法に基づいて、2020年から果実の輸入が規制されたようです。
果実に寄生する「ミバエ」など害虫の侵入を防ぐ目的で、検疫有害動植物が発生している国・地域からの生鮮果実の輸入は原則禁止されています。
マルーラにはアフリカマンゴウミバエが寄生している可能性があるため、生鮮果実が輸入できません。
日本国内でのマルーラ入手方法
輸入禁止ではありますが、マルーラ自体が危険なわけではありません。
マルーラの種はAmazonでも購入できますので、気になる方は育ててみるのもいいかもしれません。
マルーラで作ったお酒「アマルーラ クリーム」も販売していますよ!
#世界まる見え!大自然ミステリーSP